冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
*
翌朝になっても充さんの体調は回復しなかった。むしろ昨日よりも悪化しているように思う。
それでもいつも通り仕事に行こうとするので、その腕を掴んで引き止めた。
「そんなにふらふらの状態で仕事に行けるわけないじゃないですか」
「大丈夫だ。問題ない」
「問題あるから言ってるんです。今日は休みましょう」
「きみには関係ないだろ」
充さんが私の手を冷たく振り払う。その瞬間、ズキンと心が痛んだ。体調を心配しているというのにその態度はひどいと思う。
彼が私のことを突き放すなら、私だって彼を突き放せばいい。それなのに、どう見たって辛そうな充さんをこのまま出勤させることはできなかった。
「関係なくありません。私は充さんの妻だから」
彼の正面に回り込み、じっと見上げる。
「私に妻としての務めをしっかりと果たせと言ったのは充さんです。夫の体調管理も妻の務めでしょ。だから今日は仕事には行かせません」
出勤を阻止するように彼の前にたちはだかり、両手を伸ばして通せんぼをした。そんな私の行動に、充さんの目が驚いたように見開く。
そのまま通せんぼを続けていると、しばらくして充さんが観念したように息を吐き出した。