冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~

「わかった。休むよ」

 充さんはジャケットのポケットからスマホを取り出し、どこかに電話を掛け始める。相手は彼の秘書だろうか。休みの連絡を入れると、耳からスマホを離した。

「これでいいか」
「はい。今日はゆっくり休みましょう。とりあえずスーツを脱いで着替えて、ベッドで寝てください」

 充さんは私の指示に素直に従い、寝室に向かった。私はいったんリビングに戻り体温計を持ってから寝室に向かう。

 充さんはすでに着替えを済ませてベッドに横になっていた。体温計で熱を測ってみると三十八度九分。この状態で仕事に行こうとしたのだからやはり止めて正解だった。

「たぶん風邪ですね」

 こほこほと辛そうに咳込む充さんに向かってそう言った。

「俺のそばにいると移るぞ」
「大丈夫です。私はしばらく風邪なんて引いていないので」
「それは風邪が移らない理由にはならないだろ。だが、なんとかは風邪を引かないと言うからな」
「……」

 バカだと言いたいのだろうか。

 最近ではあまり聞かなくなった棘のある言葉に、思わず充さんを軽く睨んでしまった。
< 114 / 181 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop