冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
「わかった。休むよ」
充さんはジャケットのポケットからスマホを取り出し、どこかに電話を掛け始める。相手は彼の秘書だろうか。休みの連絡を入れると、耳からスマホを離した。
「これでいいか」
「はい。今日はゆっくり休みましょう。とりあえずスーツを脱いで着替えて、ベッドで寝てください」
充さんは私の指示に素直に従い、寝室に向かった。私はいったんリビングに戻り体温計を持ってから寝室に向かう。
充さんはすでに着替えを済ませてベッドに横になっていた。体温計で熱を測ってみると三十八度九分。この状態で仕事に行こうとしたのだからやはり止めて正解だった。
「たぶん風邪ですね」
こほこほと辛そうに咳込む充さんに向かってそう言った。
「俺のそばにいると移るぞ」
「大丈夫です。私はしばらく風邪なんて引いていないので」
「それは風邪が移らない理由にはならないだろ。だが、なんとかは風邪を引かないと言うからな」
「……」
バカだと言いたいのだろうか。
最近ではあまり聞かなくなった棘のある言葉に、思わず充さんを軽く睨んでしまった。