冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
「でも、私はおばあちゃんが大好きでした。あっ! 私たち三姉妹の名前っておばあちゃんが付けてくれたんですよ」
お墓参りのあとだからだろうか。充さんは興味がないと思うけど、つい祖母の話をしたくなってしまう。
「三姉妹それぞれの誕生月に咲く花の名前が付いているんです。私は三月生まれだから菫。花言葉から、ささやかな幸せを日々感じて生きていけるようにという祖母の願いが込められています」
「花言葉か。俺はあまり詳しくないが、菫の名前には素敵な意味が込められているんだな」
充さんが珍しく頬を緩めた気がした。
「俺も菫のおばあさんと会ってみたかった」
充さんと祖母が顔を合わせたらどんな話をするのだろう。祖母亡き今、それはあり得ないことなのだけどつい想像してしまう。
「きっと充さんは祖母に気に入られると思います」
「その理由は?」
充さんが不思議そうに問い掛けてくる。私は思わず「ふふふ」と笑ってしまった。
「理由は、充さんが祖父にそっくりだからです」
「菫のおじいさんに?」
「そうです。祖父は私が生まれる前に亡くなってしまったので話でしか聞いたことがないですけど、冷たい性格の人だったらしいです」