冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~

 女性はとても喜び、お礼として食事に誘われたけれど丁重にお断りをした。せめて名前だけでも教えてほしいと言われたので、名乗ってからその場をあとにしたのだけれど……。

「その女性が、グレースフルパレスホテルグループの会長の奥様だったのよ」
「えっ⁉」

 まさかあのときの女性が?

「イヤリングを一緒に探してくれた菫のことを奥様はとても気に入ったそうよ。名前だけで菫のことを探して、ぜひ息子のお嫁さんにしたいからってうちに縁談を申し込んできたの」
「そうだったんだ」

 そんな経緯があったとは思わなかった。

 それにしても名前だけで私を探し出すとはいったいどのような手を使ったのだろう。お金持ちだろうから探偵でも雇ったのだろうか。

 母の話によれば、奥様は私の実家についても調べて、先祖代々続く由緒ある老舗の旅館だとわかると、ホテルを経営する宮條家とも釣り合いが取れると判断し、ますます私を嫁に迎えたいと思ったそうだ。
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