冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
そう言ったあとで、これではまるで充さんのことも冷たい人だと言っているようなものだと気が付き、だいぶ失礼な発言をしてしまったと焦る。
「冷たい人、か」
充さんがぽつりと呟いた。
「俺は菫にそう思われているのか」
「あっ、いえ、違います……違くないけど」
「どっちだ」
充さんの鋭い視線に捉えられ、「ひぃっ」と情けない声を出してしまう。やっぱり祖父の話題は出さなければよかった。余計なことを言ってしまう前に口を閉じようと思った、そのとき――。
「しょうちゃん、危ない。前見てっ」
どこからか女性の叫ぶような声が聞こえた。振り返ると、視線の少し先にはベビーカーを押している女性の姿がある。
どうやら彼女は私たちのほうに向かって走ってきている五歳くらいの男の子のあとを追い掛けているようだ。
「あっ」
次の瞬間、しっかりと前を見ていなかった男の子が私たちに気付かず、充さんにぶつかった。しかもその手にはソフトクリームを持っていたので、充さんのズボンにべっちゃりと付いてしまう。