冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~

「ごめんなさい」

 男の子の目にうるうると涙がたまっていく。ぶつかってびっくりしたのか、ソフトクリームが食べられなくなって悲しくなったのか。男の子は涙をこらえきれずに泣き出してしまった。

 おそらくこの近くに並んでいるキッチンカーでソフトクリームを母親に買ってもらったのだろう。嬉しくて走り出してしまい、その先を歩いていた充さんとぶつかってしまったのかもしれない。

 充さんのズボンには男の子が持っていたバニラ味のソフトクリームが付着している。彼のことも心配だけど、泣いている男の子のほうがもっと心配で声を掛ける。

「大丈夫だった? 怪我はない?」
「うん。でも、僕のソフトクリームが……」

 男の子の目線に合うようにしゃがみ込んだ私はバッグからハンカチを取り出して、ソフトクリームでべちょべちょになっている男の子の手を拭く。

「ごめんね。このお兄さんのズボンがソフトクリーム食べちゃったね」

 笑いながらそんな言葉でこの場を和ませようとしたのだが、男の子の涙は止まらない。

「お兄ちゃん怒ってる?」

 不安げな表情で充さんを見上げる男の子。
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