冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
そのあとで慌てて充さんを追い掛けてに並ぶ。
「充さん。子供には優しいんですね」
「どういう意味だ」
「いえ」
ふふふっと思わず笑ってしまう。そんな私を一瞥した充さんが、歩くペースをさらに速めた。
「やっぱり充さんは話に聞いている祖父と似ています。冷たいように見えて、本当は心の温かい人」
「菫が俺を冷たい人間だと思っていることはよくわかった」
「心が温かい人とも思ってますよ」
充さんはなにも答えず、ただ足だけを前に進めている。そんな彼の隣を歩きながら、以前祖母から聞いた祖父とのエピソードを思い出した。
祖母も祖父とは親に決められて結婚をしたらしい。不本意なものではあったけれど、縁あって夫婦になったのだから祖父とはしっかり心を通わせ、愛のある夫婦になりたいと思ったそうだ。
でも、祖父がなかなか心を開いてくれずに苦労したらしい。それでも祖母はめげずに祖父に歩み寄り続けた。その結果、ようやく祖父と祖母は心を通わせることができた。周囲が羨むほどのおしどり夫婦だったそうだ。
だから私も、これからも充さんに歩み寄り続けようと思う。そうしたらいつか私に心を開いてくれるかもしれない。
いつかは祖父と祖母のような愛のある夫婦になれるように――。