冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~

「それで、私の結婚相手はどんな人?」
「おっ、前向きになってきたな」

 父は嬉しそうにしているが、私は決して前向きになったわけじゃない。そもそも前向きになるもなにも父が勝手に縁談の了承をしてしまっているのだから簡単にはもう断れないはず。それこそ失礼にあたる。

 それならばせめて相手がどんな人物なのか知りたかった。

「名前は宮條(ゆう)くんというそうだ。宮條家の次男で、歳は三十だから菫より九つ上だな。今は品川にあるグレースフルパレスホテル東京の総支配人をしているらしい」

 父が宮條家側から送られてきた悠さんの身上書を手渡してくる。簡単なプロフィールの他に本人の写真もあり、つい目を惹かれた。

 上品なグレーのスーツに身を包んだ長身で細身な体躯。おそらく縁談用に撮影された写真ではないので視線はこちらを向いていないが、横顔からでも端正な顔立ちだとわかる。

 シャープな目元と薄い唇がクールな印象を与えてはいるが、くしゃっと笑った顔にはえくぼが浮かび、どこか子犬を連想させる可愛らしさのある男性だ。

 男らしいというよりかは、中性的できれいな顔をしている。
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