冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
しんと静まる室内に母の声が響く。
「菫。生理が遅れているって、もしかして……」
なにかに気付いたように母がハッとした表情になる。
「あなた、妊娠してるんじゃないの?」
母の言葉を聞いて、とっさに自分のお腹に視線を向けた。見たところでわからないのだけれど。
思い当たる節はある。一度だけそういう行為をしているから。
「確かめてみる? 菫、ちょっとおいで」
桜ちゃんが私の手を取って立ち上がらせた。そのまま連れて行かれたのは桜ちゃん夫妻の部屋。棚の中をごそごそと漁っていた桜ちゃんが「あった」と声をあげて取り出したのは細長い形をした箱。
「妊娠検査薬よ。もしかしたらこれでわかるんじゃないかな」
「どうして桜ちゃんが持ってるの?」
「妊活してるからよ」
昨年結婚した桜ちゃん夫妻にはまだ子供がいない。どうやら妊活中だったようだ。
「トイレで確認してきなさい」
妊娠検査薬を渡されて、桜ちゃんに背中を押されながら廊下を進む。もちろん初めて使うのでどうしていいのかわからず、桜ちゃんに説明を受けてからトイレに入った。