冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
不器用な優しさ
実家から東京のマンションに戻った二日後の月曜日。
お義母様から充さんと悠さんを出産したという産婦人科を紹介してもらい、午後の診察開始時間に合わせて訪れた。
少し待ったけれど診察は無事に終了。妊娠が確定し、現在は七週に入ったところらしい。心拍確認もできたので母子手帳を貰ってくるように言われて、区役所に立ち寄ったところ帰る頃には午後四時を過ぎていた。
ふと空を見上げると黒い雲に覆われている。梅雨が明けていないこともあり最近はどんよりとした天気が続いていた。
今日は夕方頃に一時的に雨が激しく振るという予報が出ているため、バッグの中には折り畳み傘を忍ばせてある。降り出す前に早く帰ろうと歩く速度を上げようとしたものの、お腹の中の赤ちゃんの存在を思い出してやめた。転んだりしたら大変だ。
ゆっくり歩いていると、バッグの中でスマホが音を鳴らす。取り出して確認すると充さんから電話が掛かってきていた。平日のこんな時間に珍しい。
「もしもし」
なにかあったのだろうかと不思議に思いつつ電話に出ると、『今話しても大丈夫?』と充さんの落ち着いた声が聞こえた。