冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
「しまった。こんなところで寝ていた」
充さんはしっとりと湿っている髪を片手でわしゃわしゃとかき回す。
「大丈夫ですか? 濡れてますけど……」
恐る恐る声を掛けると、「問題ない」と返される。
「シャワーを浴びてくる」
充さんはソファから立ち上がり、私の横を通り過ぎると足早にリビングをあとにした。
どうして彼は濡れているのだろう? 昨夜は仕事に戻ったはずだけど車を使ったのだろうし雨に濡れるはずはないのに。まるでネックレスを探し回ったせいでずぶ濡れになってしまった昨夜の私のように彼も濡れていた。
「もしかして……」
ハッと気が付き、手の中で握っているネックレスに視線を落とす。
充さんが見つけてくれたの?
そう考えると、なぜ目が覚めてネックレスがベッドサイドのテーブルに置かれていたのかと、充さんの服と髪が微かに濡れていたのかのふたつの説明がつく。
私はとっさにリビングを飛び出してバスルームに向かった。
「充さんっ」
パウダールームの扉を開けると、ワイシャツを脱ぎ上半身裸になっている彼と目が合う。突然現れた私を見て微かに目を見開いている。そんな充さんに詰め寄った。
「充さんですか。ネックレスを見つけてくれたの」
彼の視線が私の手の中にあるネックレスに向かう。
「もう落とすなよ」