冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
充さんに確認しなかったけれど、彼は今私の地元に出張中なので帰ってきたら話そうと思う。
実は今日は三沢旅館のリニューアルオープンの日なのだ。地元では有名な老舗旅館ということもあり、地元のテレビ局が中継や取材に訪れるらしく、再建に力添えをしたグレースフルパレスホテルグループの社長である充さんもその対応のため三沢旅館に出向いていた。戻ってくるのは明日の夕方だそうだ。
午後七時を過ぎた頃、自宅のインターフォンが鳴る。確認すると仕事終わりの悠さんが訪ねてきたようだ。
玄関の施錠を解くと、リビングに入ってきた彼は牛肉の入った袋を両手に抱えている。想像していた以上の量に驚いてしまった。
「こんなにあるんですか?」
「うん。食べ切れるかな」
「どうでしょう」
すき焼きだけでは無理だと思う。充さんも悠さんもそれなりに食べる方だとは思うけど、私はそれほど食べられそうにないから。
「あ! それじゃあさっそく今夜少し使いましょう。悠さん、晩ご飯は?」
「これからだけど」
「それなら牛丼を作ります。うちで食べていってください」
「え、いいの?」
悠さんの目がキラッと輝く。どうやら食べたいらしい。けれど、すぐにその表情が曇った。