冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
「それでもあの男、実を言うと兄貴のおかげでクビになってないんだ。役職はおろされたけど、地方にあるうちの関連ホテルに移動になった。心を入れ替えて真面目に働いてるよ」
そこまで話して悠さんは困ったように眉を下げて笑った。
「兄貴は損な性格してるんだよな。不器用っていうの? そのせいで誤解されて世間に変な噂まで流されてるし」
「変な噂?」
「聞いたことない? 気に入らない社員をクビにしたり、自分の意見と対立した幹部社員を容赦なく切り捨てたりしている〝冷酷社長〟って兄貴が噂されてるの」
「あ……」
それなら私も綾芽ちゃんから聞いて知っている。
「それ全部デタラメだから。兄貴はそんなことしていない」
悠さんはきっぱりと言い切った。
「土下座のときのことも兄貴の秘書から聞いたけど、社長として冷酷にならざるを得なかったというか、あの男のように情報を横流しするような悪いやつがもう出てこないように厳しい言動で対処したんじゃないかな」
「そうだったんですね」
あのときの充さんの鋭い眼差しと氷のように冷たい声は、社長としてあえて厳しくあの男性社員を突き放していたんだ。