冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
一方の私はやはり食欲がなく、それでもお腹の子のために食べなければとちびちびと牛丼を口に運ぶ。
「菫ちゃんはつわりはないの?」
「はい。今のところないです」
「そっか。人によるって聞くし、ないならそれがいいのかもね」
ぱくぱくと牛丼を食べ進める悠さんを見ながら、私は麦茶を口に含んだ。
「でも、不調といえば不調ですよ。今日の診察でも貧血気味だと言われましたし」
「そうなの? 牛肉食べな。冷蔵庫にまだたくさんあるから」
「ありがとうございます」
たくさん食べたいけれど食欲があまりないので食べられそうにない。だから余計に貧血気味になってしまうのだろう。最近たまに立ち眩みをすることがあるので気を付けないと。
「なにかあったらすぐに兄貴に言いなよ。菫ちゃんのためならどこにいたってすぐに駆け付けてくるだろうから」
「あはは。それはどうでしょう」
さすがにないと思うので笑い飛ばすと、悠さんがじっと私のことを見てくる。それからいつも陽気な彼にしては珍しく真面目な表情で口を開いた。
「菫ちゃんは、兄貴のことどう思ってるの? 俺は兄貴の気持ちは知ってるんだけど、菫ちゃんの気持ちはわからないから気になってるんだよね。兄貴のこと好き?」
「えっ」