冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~

 唐突な質問にどう答えていいのか迷ってしまう。でも、改めて悠さんに尋ねられたことで自分の気持ちに気が付いたような、あるべき場所にストンとおさまることができたような、そんなスッキリとした気持ちになった。

「……好きです」

 きっかけはネックレスを見つけてくれたこと。でも、それよりも前――初めて会ったときからもう惹かれていたのかもしれない。

『さすが老舗旅館の娘だな。食事の所作がきれいだし、作法もよくわかっている』

 そう言われたとき、私のことをよく見てくれている人だと思った。それに、褒められたことが単純に嬉しかった。

「でも、充さんは私のこと好きじゃないですよね」

 ネックレスを見つけてくれたことをきっかけに、それまで私に興味がないと思っていた彼に実は大切にされているのではと思い始めた。

 でも、だからといって彼が私を好きなのかというと、そうではないと思う。

「どうしてそう思うの?」

 頬杖をついて悠さんが優しく尋ねる。

「結婚した日の夜に充さんが言ったんです。私の心までは欲しいと思っていない。私の役割は妻としての務めを果たすことだって」
「兄貴そんなこと言ったの?」
「はい」

 それでも私は充さんに心を開いてほしいと思った。私と同じく政略結婚をした祖母が、祖父に振り向いてもらうために歩み寄り続けたように。いつか充さんも私を好きになってくれるんじゃないかって。
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