冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
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目を覚ましたとき、ぼんやりとした視界には真っ白な天井が見えた。
ここはどこだろう? 自宅ではないように思う。
「――菫」
誰かが私の名前を呼ぶ声が聞こえて隣に視線を向ける。そこにはスーツ姿の充さんがいた。
「目が覚めたんだな。体調は?」
「体調……」
そうだ、思い出した。悠さんと食事をしたあと、眩暈がして倒れたんだ。そのあとのことを覚えていないけれど、ここはおそらく病院だろう。
「大丈夫です。それよりも赤ちゃんは?」
倒れたときにお腹をぶつけなかっただろうか。心配になって尋ねると「問題ない。元気だ」と、充さんが私のお腹に手を添える。
ホッと胸を撫で下ろしながら、彼の手の上にそっと自分の手を重ねた。充さんの手が一瞬だけピクッと小さく跳ねたけれど、すぐに私の手を優しく握り返してくれる。
「充さんはどうしてここに?」
私の地元に出張に行って、戻りは明日の夕方のはずだ。
「予定を変えて急きょ戻ってきたんだ。悠から菫が倒れて病院に運ばれたと連絡をもらって」
「すみません、ご迷惑をかけてしまいました」
上半身を起こして起き上がろうとしたけれど、充さんに止められてしまい再びベッドに横になる。