冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
「菫は貧血で倒れて病院に運ばれたんだ。念のため今夜だけ入院することになった。明日……いや、もう今日か。一度診察を受けて問題なければ家に帰れる」
ちらっと時計を確認するとすでに日付は変わっていた。
「充さん」
さっきまで眠っていたので目が冴えている。だから倒れる前に悠さんから聞いた話の真実を今すぐに知りたいと思った。
充さんの目をじっと見つめる。
「どうして私と結婚をしたんですか」
「なんだよ、急に」
唐突な私の質問に充さんは少し困惑しているように見えた。
「悠さんから聞きました。充さんが、悠さんの縁談を横取りして私と結婚したって」
充さんが目を見開く。それからボソッと「悠のやつ……」とボヤいた。
「それは本当ですか」
「ああ、本当だ」
私の問い掛けに静かに頷いた充さんがゆっくりと語り始める。
「結婚前に一度食事をしただろ。あのときよりも前から俺は菫のことを知っていた」
「えっ、どうして……」
「菫が大学生のとき、男とぶつかって転んでしまったおばあさんを助けたことがなかったか」
「おばあさんを……あっ、はい。面接の帰りのときだ」
思い出した。確か、そんな出来事があったような気がする。