冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~

「おばあさんとぶつかった男と言い争いになっただろ。それで手をあげられそうになった」
「そうです。どうして充さんが知ってるんですか?」
「あのとき菫たちの間に入って男を止めたのが俺だからだ」
「えっ……」

 そういえば上等なスーツを着た背の高い男性が私を助けてくれた記憶がある。その人が充さん?

「うそっ⁉ 気付かなかった」
「だろうな。食事のとき、初めましてと言われたから」
「そっか。充さんあのとき、初めましてじゃないって言ってましたよね。あれはそういうことだったんだ」

 その言葉が気になったけど深く追究はしなかった。あのとき教えてもらえていたら充さんのことを思い出せたかもしれないのに。

「おばあさんにぶつかっても謝罪なく立ち去ろうとした男に立ち向かっていった菫の正義感に心を打たれた。そのあとで、講義に遅れると慌てたように走り出した姿が可愛くて、それからずっと菫のことが頭から離れなかった。たぶん俺は一目惚れってやつをしてしまったんだろうな」
「一目惚れ?」

 充さんが私に? なんだか信じられない。

「母親が決めた悠の結婚相手の写真を見たとき、あのときの子だとすぐに気付いた。それで、俺が結婚したくて悠から菫を奪った。それが真実だ」
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