冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~

 話を聞いた限り、充さんは私のことをずっと想っていてくれたことになる。

「それならどうして結婚式の夜に私を突き放すような冷たいことを言ったんですか。私の心までは欲しいと思っていないって」

 私に一目惚れをしてくれたのなら、彼のその言葉は矛盾している。好きな人には好きになってほしいと思うはずだから。

「それは、菫が最初に俺を突き放したからだ」
「私が?」

 そんなことをした覚えはない。むしろ私は仲良くなりたいと思っていたのに。

「初めて食事をしたときに言っただろ。俺のことを好きになるつもりはないって」
「えっ」

 そんなこと言ったかな? 好きになるつもりはないと断言したのではなくて、好きになれるかわからないと言ったような……。

「菫の気持ちを聞いて、それでもいいから俺と結婚してほしいと思った。無理して俺のことを好きになる必要はないが、俺の妻としてそばにいてほしい。結婚式の夜、そう伝えたつもりだ」
「……」

 それもちょっと言い回しが違った気がする。

 私の心までは欲しいと思っていない。妻としての務めを果たすだけでいい。冷たくそう言われたから、充さんは私に興味がないのだと思っていた。

 今みたいに言ってもらえていた方が充さんの気持ちがしっかりと伝わってきたし、私に対する彼の誤解をすぐに解くこともできたのかもしれない。
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