冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
即座に却下すると、充さんがしょんぼりと肩を落とすから思わずクスッと笑ってしまった。
愛が生まれてから、充さんは性格がだいぶ変わったように思う。クールさは相変わらずだけれど、表情が少しは豊になり、考えていることがわかりやすくなった。
出会った当初よりも随分と物腰が柔らかくなったような気がする。
「菫が俺の子を妊娠しているとわかったときすごく嬉しかった。愛を見ていると、あの日の気持ちを思い出す」
「私の家族もいる場所で妊娠がわかったんですよね」
当時のことを思い出して笑ってしまう。それからふとその笑顔を消した。
「私はあの日、少しだけ悲しかったことを思い出しました」
「悲しかった?」
不穏なセリフを吐いたからだろうか。私の体をそっと引き寄せた充さんが「どうしてそう思った?」と不安げに尋ねてくる。
「私は充さんとの間に子供ができたことが嬉しかったけど、充さんはそうではなくて跡取りができたことだけを喜んでいると思ったので」
「それは違う。菫の勘違いだ」
「もちろん今はわかってます」
でも、あのときの私は充さんに愛されていると思っていなかったので、そんな誤解をしていた。