冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
そうではないと気付いたのは、妊娠中に貧血で倒れたあの日。両想いになってからの充さんは、溢れんばかりの愛情を私に注いでくれるようになり、お腹の中の子のことも跡取りとして見ているのではないと気付いた。
彼も私と同じように純粋に子供ができたことを喜んでいたんだ。それでもやはり宮條家の長男として跡取りも必要だから、あの日その言葉も口にしたのだろうと今ならわかる。
愛の可愛い寝顔をたっぷりと見てから、私たちはリビングに移動した。これから少し遅めの夕食なのだ。
今夜のメニューはビーフシチュー。愛のお昼寝の時間を使って調理をした。
充さんと一緒にお風呂に入った愛に授乳をして寝かしつけている間に、鍋に入っているビーフシチューを充さんが温め直していたらしい。お皿に盛ってダイニングテーブルに置いてくれた。
「すみません。一品しか作れなくて」
パンを添えるけれど、予定ではサラダともう一品用意するはずだった。けれど愛がいつもよりも早くお昼寝から目覚めてしまい、愛の相手をしながら途中まで準備していたビーフシチューを完成させるのがやっとだった。
「ビーフシチューで俺は十分満足だよ。美味しそうだ」
そう言って、充さんが柔らかく微笑む。