冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
私のことを知っている? それに、この人さっき自分のことを宮條と名乗った。ということは宮條悠さんで合ってるの? でも顔が違う。
「宮條悠さんですか?」
尋ねてみると、男性の眉間に深い皺が寄る。彼の纏う雰囲気がピリッと冷たく引き締まるのを感じた私は、思わず体を強張らせた。
「悠は俺の弟で、俺は兄の充だ」
「兄……」
なるほど。兄弟だから顔のパーツと背恰好が似ているんだ。と、納得している場合ではない。
なぜ兄のほうが現れたのだろう。私がこれから食事をするのは弟のほうなのに。
「えっと……宮條悠さんはどちらに?」
もしかして弟の付き添いで来たのだろうか。予定では一対一で食事のはずが、お兄さんも飛び入り参加とか? それか弟さんが仕事で遅れていて、到着するまではお兄さんが私の相手をするのかな。
そんなことを考えていると、目の前の彼はなぜか思い切り不機嫌そうな顔で私のことを睨むように見てくる。
「きみはなにを言っているんだ。悠は来ない」
「来ない?」
「きみの結婚相手は俺だ」
「えっ」
そうなの? 弟のほうだと聞いていたけれど……。