冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~

 お父さん、お母さん。そんなに大事なことをどうして私に伝え忘れたの!?

 何事もおっとりと構えている両親の性格には子供の頃から何度も振り回されてきたけれど、今回ばかりは許せない。勝手に縁談を了承しておきながら、その相手が変わった連絡を怠るなんて。

 この縁談を断って両親を困らせてやろうか。という悪魔な考えが脳裏をよぎる。

「とりあえず自己紹介をしてもいいか」

 ふつふつと怒りを込み上げている私とは対照的に、宮條さんは落ち着いている。というよりも、感情が抜け落ちたように淡々と物事を進めてくる人だと思った。

 宮條さんはジャケットの内ポケットから名刺入れのようなものを取り出すと、そこから一枚抜き取って私に手渡す。両手でそれを受け取った私は、まじまじと彼の名刺を見つめた。

〝グレースフルパレスホテルグループ 代表取締役社長 宮條充〟

 しゃ、社長⁉

 名刺から視線を上げた私は驚きながら宮條さんを見つめる。

 彼の弟の悠さんの総支配人という肩書きだけでも私からすれば雲の上のような人なのに、彼はさらにその上の立場にいるらしい。

 見た目からしておそらく三十代半ば。その年齢で大企業グレースフルパレスホテルグループを率いているとは、よほど優秀なのだろう。
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