冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~

「気に入らない社員をクビにしたり、自分の意見と対立した幹部社員を容赦なく切り捨てたりしているらしいよ」
「そうなの?」
「ネットにはそう書かれていたけど」

 本当か嘘かわからないよ、と付け足した綾芽ちゃんに向かって私はぽつりと呟く。

「そういうことはもっと早く教えてほしかった」
「だって結婚する前にこんなこと聞いたら、菫の決心が揺らぐと思って」
「揺らぎたかったよ~」

 今の情報を結婚前に教えてもらえていたら、私は充さんとの結婚を考え直したかもしれない。

 初対面のときから笑顔がなく、常にクールな表情の無愛想な人だとは思っていたけれど、あのときはまだ冷酷な一面を見せていなかったように思う。だから騙されてしまった。

「今からでも別れられないかな」

 肩を落として呟いた私に、綾芽ちゃんが困ったように息を吐いた。

「離婚したいってこと? それは無理よ。三沢旅館の再建に向けて、すでにグレースフルパレスホテルグループの援助は始まっているんだから。今、菫が離婚なんてしたらそれも打ち切りよ」
「それはわかってるんだけど……」

 私はいじけたようにグラスの中の氷をストローでくるくるとかき混ぜる。
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