冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
充さんと一緒にいると、どうしても初夜のときに言われた言葉を思い出してしまう。それが呪文のように頭の中で繰り返されるのだ。
それくらい私にとってはショックなセリフだったこともあり、私は充さんとこのまま夫婦関係を続けていく自信をすっかり失くしていた。
「それなら菫も割り切っちゃえば?」
「割り切る?」
綾芽ちゃんの言葉に私は首を傾げた。
「妻としての務めを果たすだけでいいって言われたなら、それだけしていればいいってこと。ある程度距離を置けばいいのよ」
「うん……。私も初めはそうしようと思ったんだけどね」
綾芽ちゃんの意見に同意しつつ、充さんと距離を置けない理由を打ち明ける。
「同じ家に暮らしているのに、心が通じ合っていないのはやっぱり気まずいよ。縁あって夫婦になったんだから、私は充さんと仲良くなりたい」
そんな私の気持ちは初夜のときの充さんの言葉で一度は粉々に砕けた。それでも心の片隅ではまだ充さんとの関係が良くなるように望んでいる自分がいる。
離婚ができないのなら、関係をより良くするしかない。
私が歩み寄れば、もしかしたら充さんも心を開いてくれるかもしれないし……。
そんなことを思う私は、考えが甘いのだろうか。
「菫らしい考え方ね」
綾芽ちゃんは困ったように眉を下げて笑った。