冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
「夕食はどうしますか」
本当なら家で食べないはずだったけれど、早く帰宅したのだから食べるのだろうか。夫のために食事の用意をするのも妻の務めですもんね。と、不貞腐れたことを思ってしまう。
「俺のも作れるのか」
「はい。買い物をしてきたばかりなので食材はたくさんあります」
「それじゃあ頼む。部屋で仕事をしているから、時間になったら呼んでくれ」
充さんが私に背を向けてキッチンから出ていく。
私たちの会話はいつもどこか後味悪く終わってしまう。まぁ、形だけの夫婦だもんね。と、心の中で投げやりに呟いて、残りの食材を冷蔵庫にしまった。
「ああ、そうだ。来週の土曜日はなにか予定はあるのか」
リビングを出ていくのかと思いきや、充さんはドアノブに手を掛けたところで立ち止まり振り返る。
「その日だが、食事に付き合ってほしいんだ」
「食事ですか?」
充さんと結婚して一ヶ月。まだ一度もふたりで出掛けたことはなく、もちろんこういうお誘いも初めて。
私のことを形だけの妻としか思っていない彼にしては珍しい行動に思わずきょとんとしてしまう。
私を食事に誘うなんて、彼の中でなにか心境の変化でもあったのだろうか……。