冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~

 充さんからロビーで待つように言われているので、いくつか置かれている半円形のソファに腰を下ろした。

 今日は、充さんに言われた通り着物を着てきた。急きょ実家から送ってもらったもので、一番上の姉の桜ちゃんが二十代の頃に着ていたお下がりだ。

 着付けについては子供の頃に祖母から習っているので自分で着ることができたし、ショートボブの髪は全体的に緩く巻き、片方だけ耳に掛けて小振りな飾りをつけてきた。

 自分なりに見た目を整えてきたのだけれど、私の着物姿を見たところで充さんはなんのリアクションもしてくれないはず。結婚式のときだってドレス姿の私を見てもなにも言ってくれなかったし……。

 そんなことを考えていると、隣に座っている男性が不意に勢いよく立ち上がった。突然のことに驚いた私の体がピクッと小さく跳ねる。

 男性の年齢はおそらく三十代後半。観光などのプライベートで宿泊している客が多い中、ビジネススーツを着ていることに違和感を覚える。
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