冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~

 すると、ロビー内が微かにざわつき始めた。フロントにいる従業員たちの視線が正面入口に向かい、これまで以上にビシッと背筋を伸ばして姿勢を正す。

 業務を続けてはいるが、彼らからはどこか緊張している様子が感じられ、ロビー内の雰囲気もピリッと引き締まった気がした。

 いったい何事だろうと不思議に思い、正面入口に視線を向ける。そこには、スリーピーススーツを着た背の高い男性と、その後ろからもうひとりスーツ姿の男性がロビーに向かって歩いてくるのが見えた。

 目を凝らして確認すると、スリーピーススーツのほうは私の待ち人である充さんだ。どうやら仕事を終えて到着したらしい。

 後ろを歩く男性は第一秘書の方だろうか。結婚式のときに挨拶をした覚えがある。

 充さんとすれ違った従業員が彼に向かって会釈をする。先ほどのピリッとした緊張感は彼らのホテルの社長である充さんが現れたからかもしれない。

 充さんがソファに座る私に気が付いた。目が合い、こちらに向かって歩いてくる。すると、私の隣に座る男性が一目散に駆け出した。その先にいるのは充さんだ。
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