冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
眼鏡をかけた、すらりと背の高い白髪の男性がベイカー先生で、すっきりとしたショートヘアがよく似合う美人な女性がカレン夫人だろうか。共に六十代には見えないほど若々しい。
そんなベイカー夫妻のもとに歩み寄った充さんが英語で親しげに声を掛けた。
「Welcome to Japan! We're so happy that you're here」
私にはほとんど見せることのない笑顔を浮かべた充さんと握手を交わすベイカー先生。
「Thank you. It's nice to be here」
朗らかな笑顔を浮かべながらそう答えたベイカー先生に、充さんがなにかを問い掛けるように声を掛ける。
「How was your flight?」
「The plane was delayed a bit but was OK because I slept like a log」
「That's the attitude!」
ベイカー先生の言葉に充さんが笑っている。流れるように進むふたりの会話を聞きながら、私は重大なことに気付いてしまった。
……会話の内容がまったくわからない。
ここにいる私だけが英語を聞き取れず、話すこともできないのだ。
私以外の三人でなにやら会話が盛り上がっている。