冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~

「緊張しただろ」

 目の前で足を止めた彼の手が、まるで私のことを労るように優しく髪を撫でる。

「料理は楽しめたか」
「はい。美味しかったです」

 正直にいうと味なんてまったくしなかった。

 充さんとベイカー夫妻の表情をしっかりと見ながら会話に耳を傾けて、内容はわからないけれど相槌はきちんと打って、三人が笑っているところでは私も笑顔を作り、なんとか馴染めるように必死だったから。

「ベイカー先生とカレン夫人が、菫はしっかりと相手の目を見て話しを聞いて答えてくれる子だと褒めていた。英語は話せないが、一生懸命伝えようとしている姿に好感が持てたそうだ。また会いたいと言っていた」
「本当ですか?」
「ああ」

 静かに頷いた充さんを見て、私はホッと胸を撫で下ろす。

 英語が話せないからうまくコミュニケーションが取れたのか不安だったけれど、悪い印象は持たれなかったようで安心した。

「次にお会いするときまでに英語の勉強をしておきます」
「勉強したところですぐに上達はできないだろうな。菫の今の英語力だと、すらすら話せるようになるまでにはかなりの時間を要しそうだ」
「なっ……」
「あのナイストゥーミートゥーはひどかった。小学生でももっとマシに言える」

 ほら、また棘のある言い方をする!
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