冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
そんなことを考えながら、さっきからずっとドキドキしている心臓を必死になだめる。
「菫。今夜は……」
充さんがなにかを言い掛けたときだった。彼のスーツのジャケットからスマホの鳴る音が聞こえた。
私の体を離した彼の手が内ポケットからスマホを取り出して画面を確認する。途端に表情がキリっと引き締まった。
「悪い。仕事の連絡だ。ちょっと話してくるから、先にシャワーでも浴びていてくれ」
充さんはそう言うと私の隣を素早く通りすぎて、スマホを耳に当てながら歩き出す。
「俺だ。どうした――」
ソファに腰を下ろすと、さっそく仕事の話を始めてしまった。
しっかりとした口調でテキパキと指示を出す彼はやはりお酒に酔っているようには見えない。ということは、先ほどの突然の抱擁は酔いのせいではなさそうだ。
『きれいだよ』
そう言って抱き締められたときのことを思い出した途端、沸騰したように体中が熱くなり、電話中の充さんから素早く視線を逸らした。
さっきのはなんだったのだろう。普段はクールな態度の彼が見せた甘い態度に動揺してしまう。
体にはまだ充さんに抱き締められたときの感触と彼の体から伝わる熱が残っている。なんとなく恥ずかしくなった私は、それらをすべて洗い流すためバスルームへと向かった。