冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
「――菫」
背後から突然名前を呼ばれて「ひぃっ!」と間抜けな声が出てしまった。バスルームから戻ってきた充さんが、そんな私のことを訝しげに見つめる。
ゆったりと着ているガウンタイプのパジャマから引き締まった胸元がちらりと見えた瞬間、私は不自然なほど大きく顔を背けてしまった。
どうしよう。やっぱり緊張する……!
一緒に暮らしているのだからシャワーを浴び終えたばかりの充さんなんてもう何度も見ているはずなのに。まだ少し水分を含み、しっとりとした艶のある黒髪がとても色っぽく見えて、それだけでドキドキしてしまう。
もしかして今夜、私は充さんに抱かれるのではないだろうか。
そんなことを思ってしまったせいで、頭の中はもうそれだけだ。
初夜のときは私が泣いてしまったから最後までできなかった。あれ以来、充さんは私を求めてこない。だけど、今夜は……。
「あ、あの。私、今日はなんだか疲れてしまったので先に休みます」
おやすみなさいと早口で伝えてから、座っているベッドに飛び込み頭まで布団を被った。
まったく眠くなどないけれど、こうでもしないと緊張でどうにかなってしまいそうだ。