冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~

 布団の中できゅっと強く目を瞑る。ドキドキしている心臓に向かって、おさまれ~、おさまれ~、と呪文のように唱えていると、ベッドのスプリングがキシッと鳴る音が聞こえた。

「――悪いが、今夜はまだ寝かせない」

 布団を強引に剝がされると、私の頭の横に手を着いた充さんが覆い被さってくる。普段は冷たさを感じる彼の瞳にわずかな熱を感じ取り、私は思わず息を呑んだ。

「抱いてもいいか」

 シーツに縫い留めるように充さんの手が私の両手首を掴んだ。そのままゆっくりと顔を寄せてくる。

「俺もそろそろ限界だ。自分の妻をこの手で抱きたい」
「充さん。待っ……」

 私の言葉ごとの飲み込むように唇を重ねられる。驚きで目を見開いたけれど、啄むような優しい口付けに自然と瞼が落ちる。

 やっぱり今夜、彼は私のことを抱くつもりなんだ……。

 ふと初夜のときの言葉を思い出す。充さんにとってこれからの行為は子作りのためのものでしかない。

 先ほど充さんが言った『そろそろ限界』というのは、跡取りのためにもそろそろ子作りを始めないといけないという焦りからくるものなのだろうか。

 そのためだけに体を重ねるのはとても虚しい行為だ。でも――。
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