冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
再び離れる距離
頬に当たるほんのりとした光に気が付いて、ゆっくりと意識が浮上する。けれど、まだ眠くて瞼が完全には上がらない。
ふかふかの布団に足のつま先から口もとまですっぽりとくるまりながら、もぞもぞと寝返りを打った。
ぼんやりとした視界の先にはスーツのジャケットに片腕を通している充さんの背中がある。そのまま見つめていると、私の視線に気が付いたのか彼がゆっくりと振り返った。
「起きたのか」
片手でスーツのボタンを留めながら充さんがこちらに近付いてきて、ベッドの縁にそっと腰を下ろす。スプリングがキシッと静かに音を鳴らした。
「まだ寝ていろ。昨晩は無理をさせたからな。体は大丈夫か」
充さんの手が私の髪をそっと撫でる。
昨晩……。そうだ、私は充さんに抱かれたんだ。それも一度では終わらずに二度、三度……。途中で意識を飛ばしてしまった気がする。
今もまだ完全には覚醒しきれていないせいで、意識がふわふわとしている。これが現実なのか夢なのかもわからない。