冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
何度かふたりだけで食事や遊びに誘われたことがあったけれど断っていたし、『俺、三沢のこと好きなんだよね』と言われたこともあるけれど、遊び人の言うことなので本気にはしなかった。
男性経験がないのでコロッと落ちそうになったこともあったけれど、他の女子にもがんがんアピールしている坪井くんの姿を見て、この人は危険だと判断した私は彼とは一線を引くようにしていた。
まさか卒業してからこんな場所で再会するとは思わなかった。
「どうして三沢がクレシャリーテにいるの?」
「えっ、えっと……昨晩ここに泊まって、今から帰るところ」
「泊まった?」
坪井くんの視線が私のことを見送りにきてくれた男性スタッフに向かう。それから再び私に視線を戻し、小声で話し掛けてくる。
「もしかしてラグジュアリーフロアに泊まった?」
「どうしてわかるの?」
客室までは教えていないはず。
「――奥様。失礼ですが、そちらの方はお知り合いでしょうか」
男性スタッフが不思議そうに私と坪井くんを交互に見るので「大学の頃の同級生です」と伝える。
きっと彼は、私を見送るためにエントランスまで来たものの、私が坪井くんと話し始めてしまったため、戻るタイミングを失ってしまったのだろう。