冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~

 そのとき坪井くんには彼女がいたから、冗談で言っているのだと思っていた。本気で言っていたとしても、彼女がいたのにそれはどうなのだろうと坪井くんに不信感を抱く。

「他の女子はちょっとアピールしただけでコロッと落ちてくれるのに、三沢だけはガードが固すぎて無理でさ。それが逆に俺の心に火をつけたというか、ますます三沢を落としたいって思ったけど、卒業までずっと無理だったからなんか悔しくて」

 常に彼女が絶えなかったくせに、私のことを狙っていたとはどういうことだろうか。それは坪井くんの彼女たちに対して不誠実だと思うし、こんな男に落ちなくてよかったと思う。

「今日再会して、やっぱり三沢ってめちゃくちゃ俺のタイプだって改めて気付いたんだよな」

 そう話す坪井くんの手が、テーブルの上に置いている私の手に重なった。その瞬間、背中にぞぞぞと冷たいものが駆け抜けていく。

「三沢、旦那にちゃんと愛されてんの? クレシャリーテに泊まったらしいけど、帰りひとりだったじゃん。旦那は? 先に帰ったんだろ」
「うっ……」

 坪井くんの言葉が鋭いナイフのように私のことをプスプスと突き刺してくる。
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