冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
舞い込んだ縁談



「えっ、結婚⁉」

 国内屈指の大企業・グレースフルパレスホテルグループを経営する宮條家から、縁談の話が舞い込んだのは今から半年前の十月。

 都内の大学に通いながら小さなアパートでひとり暮らしをしていた私は、両親に呼び戻されて一年振りに実家に帰省することになった。

 人生を左右するとても大事な話があるからと言われて、いったい何事かと思えば私の結婚が決まったというとんでもない報告。意味がわからなくて叫び声をあげてしまったほどだ。

「まぁまぁ、菫。ちょっと落ち着きなさい」
「落ち着いていられるわけないでしょ。結婚ってどういうこと⁉」

 畳を敷き詰めた和室の中央には趣のある卓袱台が置かれていて、対面に座る父が太くて立派な眉を下げながらちょっと困ったように口を開く。

「それがな、父さんも驚いているんだ。あの宮條家が、地方にあるちっぽけな旅館の末娘に縁談を申し込んでくるなんて」
「信じられないわよね」

 父の隣に座る母も頬に手を添えて困惑の表情を浮かべていた。
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