冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
「充さん、お仕事は?」
「終わった。今日はクレシャリーテで総支配人と各部門の部長たちを集めた会議をしただけだ」
「そうですか」
仕事には行っていたけれど東京にある本社ではなくてクレシャリーテにいたらしい。
「その会議を終えたところで、きみの見送りに出ていたスタッフから連絡を受けた。きみが大学の同級生だという男に無理やりどこかに連れ去れて行かれたと。それで、周辺を探してあのカフェで見つけた」
それで充さんはあの場に現れたらしい。
確かにあのとき、少し強引に坪井くんにランチに誘われた。どうやらその様子を男性スタッフがこっそり見ていて、念のため充さんに報告をしたのだろう。
「さっきの男は本当にただの同級生なのか」
「本当です」
「口説かれていたが?」
「そ、それは……。でも断るつもりでした」
「当たり前だろ」
ぴしゃりと充さんが言い放つ。
気まずい沈黙が車内に流れる。充さんから伝わってくる静かな怒りが、私の全身をぷすぷすと突き刺してくるようだ。