冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
「すみませんでした」
「謝るということはやましいことでもあるのか」
「いえ、ないです」
沈黙に耐えられずとにかく謝罪の言葉を口にしたのだが、すぐに充さんに言い返されてしまう。私はぶんぶんと首を横に振って否定した。
車が赤信号で停車すると、ハンドルを軽く握り直した充さんが重たいため息をこぼす。
「……くそっ。嫉妬で狂いそうだ」
ぽつりとそんなことを呟いた彼が、少し乱暴な手つきで自身の髪をくしゃりとかきあげる。
嫉妬?
どういう意味だろうと充さんの横顔を見つめるけれど、彼はハンドルを指でトントンと叩きながら、なにか言いたそうにしているものの結局なにも言わずに再びため息を吐いた。
信号が青に変わると、車がゆっくりと加速を始める。次の信号を左折するための車線変更を済ませた充さんが静かに口を開いた。
「前にも伝えたが、俺はきみの心まで欲しいとは思っていない。だからきみが誰を好きでも構わないが、白昼堂々とああやって男とふたりで会うのはやめろ。変な噂が立つのは避けたい」
「噂?」
「社長の妻が不倫をしていると知られたら会社にとって印象が悪い」
「わ、私は不倫なんて……」
思わずそう叫んだ私を充さんが一瞥する。