冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
「さっきのはそう疑われてもおかしくない状況だ。きみには失望した。これからはもっと俺の妻として相応しい行動を取ってほしい」
「……っ」
充さんの鋭い言葉に思わず俯いてしまった私は下唇をきゅっと噛みしめる。
失望した。そう告げた彼の声が耳の奥でこだまする。
もともと妻としてそれほど期待されていなかったのに、今回の件でさらに印象を悪くしてしまった。
軽率だったと思う。坪井くんに食事に誘われたとき、なんとしてでも彼の手を振り払うべきだった。こんなことになってしまい、坪井くんにも申し訳なく思う。
「すみませんでした」
目にうっすらと涙が浮かび、くすんと鼻をすすった。
昨夜の夫婦の営みを通して、充さんとの距離が少しは縮まったような気がしたのに。私のせいで再び距離が離れて険悪ムードになってしまった。
その証拠に充さんはさっきから私のことを〝きみ〟と呼んで、名前を呼んでくれない。まるで結婚当初の頃に逆戻りしてしまったようだ。
充さんはきっと私への興味をますますなくしてしまっただろう。できることなら彼と仲良くなりたいと思ったけれど、やはり難しいのだろうか。
私たち夫婦にはこのまま愛は芽生えそうにないのかもしれない。