冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
一目惚れ side充
午前八時半。
都内にあるグレースフルパレスホテルグループの本社ビルのオフィスに入った俺は、執務イスに腰を下ろすとパソコンを起動させる。
各ホテルの売上や予約状況などを確認しているとドアをノックする音が聞こえた。こちらが返事をするよりも先に入室してきたのは弟の悠だ。
「兄貴、入るよ」
品川にあるグレースフルパレスホテル東京の総支配人を務める悠が本社に顔を出すのは珍しいが、月曜日の今日は月例の管理職会議があるので訪れている。
会議開始は午前九時半からなのでまだ一時間はあるのだが、いつもよりも悠の到着が早い。
「どうした。なにかあったのか」
パソコンから視線を外して問いかけると、応接用のソファに腰を下ろした悠が「別に」と笑う。
「兄貴の顔が見たくなって早く来ただけ」
「気持ち悪いことを言うな。それに、昨日も会ったばかりだろ」
昨日は宮條家の本邸で家族や親族が集まり母親の誕生日を祝うパーティーが開かれた。
もちろん息子である俺たちも参加したので、そこで顔を合わせているし話もしたばかりだ。