冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
俺と菫の様子がおかしかったのは、先週の日曜日に彼女が俺の知らないところで大学の同級生の男と会っていたのが原因だ。
クレシャリーテのスタッフから菫が男に連れ去られるようにどこかへ向かったと聞いたときは焦りと動揺で心臓がひゅんと縮こまった。
とりあえず周辺を探してみるとカフェのテラス席でふたりを見つけ、男の手が菫の手を握っているのを見て目を見張った。
すぐにふたりのもとへ駆け寄り、耳に飛び込んできた会話でさらに怒りが増す。
男が菫のことを口説いていたのだ。
すぐに彼女をその場から連れ去ったのだが、帰りの車内でも苛立ちが消えることはなかった。
『きみの心まで欲しいとは思っていない』
初夜のときにそう言ったことを後悔している。
本音を言えば、初めて会った日からずっと俺を好きになってほしいと思っている。でも、妻の務めを果たすだけでいいと言ってしまった手前、今さら好きだとは伝えられない。
他の男と会っている菫を見て、狂いそうなほどの嫉妬に駆られていたのに、帰りの車内では彼女を突き放すようなセリフしか言えなかった自分自身に対して一番腹が立っている。
あの日から俺たちの関係は以前にも増してぎくしゃくしてしまった。