冷酷御曹司の激情が溢れ、愛の証を宿す~エリート旦那様との甘くとろける政略結婚~
「ああ、順調だ。八月にはリニューアルオープンさせる予定でいる」
菫の実家である三沢旅館は、俺たちの結婚を機にグレースフルパレスホテルグループが再建に向けた援助をすることになった。
社長である俺が直々にその指揮を取っている。なにも妻の実家だからという理由からではない。これまでも俺は経営不振や破綻に追い込まれた旅館やホテルの再建の依頼をいくつも受けて、それに成功している。俺の得意分野だ。だから今回も俺が自ら指揮を取ることにした。
客足が減っている三沢旅館には建物のリニューアルを始め、根本的な経営方針の見直しや従業員たちの意識改革を中心に、再建に向けて動いているところだ。
先週も三日間ほど本社を離れて、リニューアル工事中の三沢旅館の様子を見てきた。
「実家の旅館が賑わいを取り戻したら菫ちゃん喜ぶんじゃないかな。兄貴のことも好きになってくれるかもしれないよ」
「どうだろうな。そうだと俺は嬉しいが」
悠の言葉に静かに頷くと、「おっ、兄貴が珍しく素直」と茶化すような声が返ってくる。それはもう無視することにして、パソコン画面に視線を戻した。
そこへ秘書が入室してきて、入れ替わるように悠が部屋を出ていく。
今日のスケジュールの確認を行ったあとで会議室に移動した。