あなたと、カラフルな世界へ
春。
私が一番好きな季節。

まだ硬い制服に袖を通して、履きなれないローファーを履いて
「行ってきます」
と下を向いたままボソッと呟く。

もちろん、返事なんて無い。

父と母は私が中学二年の時に離婚して、今は母と二人で暮らしている。
離婚してから、元々忙しかった母は前よりもっと忙しくなった。

朝早くに仕事に行き、夜遅くに帰ってくる為、会えるのは私が寝る準備をしているほんの数分。
一日中会えないなんてことも珍しくはない。

そんな日が一年ほど続けば、
「行ってらっしゃい」
の一言がないくらいなんともない。
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