能ある彼女は敏腕社長に捕獲される
婚約発表会見の当日を迎えた。

「思った以上に決まったな、おい…」

控室でそう呟いた社長に、
「そうですね」

私は返事をした。

「逃げられないようにとだいぶ周辺を固めてきましたね」

そう言った私に、
「ああ…」

社長はこれまでの出来事を思い出したと言うように息を吐いた。

各方面から言われる“おめでとうございます”と言う祝福の言葉に社長は頭と耳が痛いようだった。

私は腕時計に視線を落とすと、先ほど兄からメッセージが届いたスマートフォンの確認をした。

そのメッセージの内容を確かめた私はスマートフォンをスーツの胸ポケットに入れた。

目を閉じて自分の気持ちを落ち着かせる。

ーー準備はもうできている、後は勝負をするだけだ。
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