能ある彼女は敏腕社長に捕獲される
「おい」

社長に声をかけられたので閉じていた目を開けて、彼に視線を向けた。

「何ですか?」

そう聞いた私に、
「君は、何も言わないのか?」
と、社長は言った。

「はい?」

何の話をしているんだろうか?

「俺がこのまま結婚させられることに対して、君は何も言わないのか?」

そう言うことか。

「所詮は他人事ですから」

私は言い返した。

「…そんなような気がしたよ」

じゃあ、聞くなよ…と、私は心の中でツッコミを入れた。

「私に止めてくれと言って欲しいんですか?」

そう聞いた私に、
「正直なところ、君からそう言われることを期待していた」
と、社長は答えた。

「えっ?」

期待って…と、私が思わず聞き返したら、
「君が止めてくれたら、俺は今まで築きあげた全てを捨てて君と一緒に逃げることを選ぶ」

社長は言った。
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