能ある彼女は敏腕社長に捕獲される

有能な彼女は敏腕社長に捕まる

「お帰り」

兄と一緒に駅を出ると、社長が迎えてくれた。

「えっ？」

何で？

私、社長に迎えを頼んだっけか？

遅くなるかも知れないから先に食事を済ませて先に寝てくれと言ったと思うけれど、迎えを頼んだ覚えはない。

社長の姿を見た兄は、
「じゃあ、俺はこの辺で帰るわ」
と、言って立ち去った。

「えっ、兄ちゃん？」

先ほど電車の中でどこかで軽くお茶をして、それから夕飯を食べに行こうかと言っていたのに…。

邪魔者はとっとと去るぜと言う兄のその様子に私は何とも言えなかった。

「君のお兄さんは話がわかる人なんだな」

だんだんと見えなくなる兄の後ろ姿に、社長は私に言った。

「ええ、そうですね…」

私はそう返事をすることしかできなかった。