能ある彼女は敏腕社長に捕獲される
門谷紀香(カドヤノリカ)、28歳。

医療機器メーカー『三柳株式会社』の営業部で働き始めて5年目のOLだ。

誰もが1度は耳にしたことがあるであろう大企業の営業部で毎月ノルマをギリギリ達成する程度の成果しかあげていない私は完全な無能社員である。

「我が社始まって以来の無能社員、だって」

ケケケッと笑っている私は不名誉過ぎるこの称号を特に気にしていない。

どうせ頑張って売上を伸ばしたとしても給料はあがらないし、出世したとしても仕事量や責任が増えるだけでこれもまた給料があがらない。

「ホント、割にあわないわよねー」

頑張ったところで身も心も悪くするんだったら無能で結構、コケコッコーって言う話だ。

「さて…デパートで北海道物産展がやってるし、何か美味しいものでも食べて帰ろうかな」

そう呟いたのと同時に、エレベーターが1階に到着した。
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