能ある彼女は敏腕社長に捕獲される
ギリギリでも適度にノルマは達成、残業はしない、向上心も出世願望も結婚願望もオールゼロでありんす。

何事もマイペースに、自分の身の丈にあった生活を送るのが1番でやんす。

と思って日々を過ごしていたら…目の前の掲示板に貼られている“それ”に、私は絶句していた。

「すげー」

「門谷さんって、あの…」

「“我が社始まって以来の無能社員”の、あの門谷さんだろ?」

「不思議だなあ」

うん、本当に不思議ですわ…。

自分の目がおかしくなったのかと思いましたわ…。

『営業部 門谷紀香殿

秘書課への勤務を命ずる』

何がどうしてこうなったんだ、おい!?

掲示板の前で固まっている私に、
「よかったなー、秘書課に異動だぞ」

部長はガハハと笑っていた。

それでも固まっている私に、
「おっ、もしや秘書課への異動が嬉しくて何も言えないってか?」

部長はまたガハハと笑った。
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