能ある彼女は敏腕社長に捕獲される
「似合ってるな」

白のシャツにグレーのジャケットを羽織っている社長が私の格好を上から下まで確かめるように見たかと思ったら、そう言った。

最後にワンピースと同じ色のパンプスを履いたら、
「俺が見立てた通りだったな」
と、社長はそんなことを言った。

これ、全部社長が選んだものだったのか。

よくやるなと思いながら社長と一緒に車に乗って向かった先は、『東京カントリーホテル』だった。

芸能人もお忍びで泊まりにくると言われるだけの高級ホテルで何をするんだろうと思っていたら、最上階にあるカフェへと通された。

「その様子だと、アフタヌーンティーは初めてみたいだな」

特に何も言わない私に向かって社長は言った。

今流行っていると言う“ヌン活”ーー英国発祥の喫茶習慣「アフタヌーンティー」を楽しむ活動のことであるーーにきたんだと言うことを、私はやっと理解した。
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